CFOの業務と必須スキル獲得のロードマップ

キャリアアップ戦略

CFOの実務は、当然会社ごとで管轄範囲が異なります。
しかし、どんな会社のCFOにも共通する業務というものはある程度決まっています。

今回は、CFOの「必須業務」と併せて「必須スキル」を明示し、
そのスキル獲得のロードマップを描いていきます。

✓本記事の内容
 ・CFOの共通業務(どんな会社でも共通)を説明します。
 ・CFOの必須スキルを説明します。
 ・必須スキル獲得方法とロードマップを描きます。

✓執筆者プロフィール
・日系の上場企業の経営企画部長
・MBA取得中(国内の経営大学院所属2020年記事執筆時点)
・28才まで営業畑を歩むが、経営企画へキャリアチェンジ。

新卒で住友系の機械メーカーに入社し、トヨタ自動車向けの営業部へ配属。割とすぐ嫌になって1年程で退職。その後コンサルへ。経営企画という仕事に出会ってIPOを主導、31才で上場準備室長として上場達成。以降は経営企画部門一本。
(IPOのBefore・Afterやってるので、IRや法定開示、コーポレート部門の仕事大体全部できます。)

※会社規模やその会社の性質によってCFOに求められるものは異なりますが、
ここでは中堅規模(売上1000億~3000億程度、従業員1000人~3000人が目安)の上場企業のCFO、
または投資ファンドから企業再生やバリューアップ先の企業に派遣されるCFO

になるための道筋を検討するということを目安として進めたいと思います。

CFOの共通業務

日本においてCFOの位置づけというのは曖昧ですが、
イメージとしては「経営企画部長+財務部長+経理部長」といったところです。

肩書はCFOとなっていても、単に「財務部長」や「経理部長」であることもしばしばです。

✓よくあるCFOモドキの例
 ・決算と銀行取引(借入手続きや)はやるが、経営戦略などにはノータッチ
 ・管理部業務は管轄しているが営業部の数値管理や事業戦略には口を出さない
 ・社内活動に偏っていて外部とのアライアンスや人脈構築力が弱い

重要なのは
「CFOは事業全体の数値を把握し企業価値向上にコミットする」
という観点から、
企業の舵取り=経営戦略や事業計画の策定に主体的に関わっていかなくてはいけないということです。

決算やその他管理業務はできるけれど、
経営戦略の立案や営業数値の管理、予算と実績の差異、予算と予測差異を埋めることには
タッチしないという「スーパー事務屋」タイプが結構います。

お金や数値管理は企業全体何を行うにしても関わりますので、
CFOは企業活動の全体に関与するといっても過言ではありません。
※このあたりは別の記事で下記の記事で書いておりますので、
興味ある方は是非読んでみてください。
Read me!【CFOとは?これからの日本企業に必要なCFO像」】

以下、CFOの共通業務とその遂行にあたって必要なスキルを特に抜粋して書いていきます。

メイン1:経営戦略と事業実行

CFOとしての最も重要な業務は

  1. 経営戦略の立案に必要な提言を数値の面からCEO(社長)に提言し共に作り上げること
  2. 予算と実績の差、予算と予測の差を的確に認識し、未達部分のアラートを各部門へ出すこと
  3. 目標とする財務指標を設定し、その達成に向けて会社を動かすこと

となります。

そのために重要なスキルは
・経営戦略立案や事業計画の立案、コーポレートアクションとの連動への実務経験
・数値管理による業務効率化や営業効率アップの実務経験、それを可能にする管理会計スキル
・企業価値を算定現状を把握するノウハウ
となりますが、こういったスキルの獲得にあたっては大きく分けて以下の2つの道が考えられます。

①MBAによるケーススタディなどを通じて経営戦略を体系的に学び、経営企画など実務で経験を積む
戦略コンサル、経営コンサルで実務経験を積む

または、経営企画がしっかりと「マーケティングや事業企画、新規事業開発」
を中心業務としている会社での実務経験でも習得可能です。

どのパターンが良いかは人それぞれであり、
タイミングもありますので一概にどれが正解とは言えません。

ただし、言えることとしては
経営戦略や事業計画立案や予実管理は経験を積むことが必要となるため、
なるべく早い段階(35才前)ではある程度の土壌があることが望ましいと思います。

メイン2:会計・ファイナンス業務

決算業務は会社にとってなくてはならないものですが、
これは正確にやれば良いという性質のもので、CFOの第一の業務とはなりません。
むしろ、会社の血液である資金獲得や多額の資金を投下する際の投資判断の方に
ウェイトがあります。

そのため

  1. 銀行との折衝、借入・資金調達
  2. 資金繰り管理

この2つの経験は必須と考えられます。
これは事業会社の財務管轄でしか経験できないことになります。

そのため

・コンサルからのキャリアスタートの場合は中堅企業の財務管轄部門への転職による実務経験
が必要です。

メイン3:コーポレートアクション

コーポレートアクションは裾野が広く、
案件によって深度に差が出ます。(タイミングの問題もあります。)

コーポレートアクションは重要な順に

  1. M&A
  2. IR
  3. IPO

となります。
M&Aは企業の飛躍にとって有力な選択肢であるため、
ある程度の企業でCFOとなるからには高確率で遭遇する業務となります。

IRは決算同様、正確に決まり通りこなすという側面もありますが、
株価向上のために有効なIR戦略を立案し、株価を上昇させM&Aや公募増資などによって
資金調達を行うというのは上場会社の大きなトピックスとなります。

IPOはあまり機会が多くあるわけではありませんが、
特殊な業務分野となるため、検討する際に経験があると企業にとっては
大きなアドバンテージとなります。
何より、IPOを主導するうえでほぼ企業活動の全分野について
熟知し各部門との連携という非常に重要なスキルが向上します。

コーポレートアクション経験は自分のコントロール外にあることが多いので、
会社でそういった業務が発生した際には何とか食らいついて経験を積むという意識が重要です。

マネジメントスキル

CFOに求められるマネジメントスキルには、
個人単位~チーム単位のものもありますが、
組織全体に関わるものもあります。

非常に重要なのは給与体系の構築の実務経験です。
これは座学や理論では全く学ぶことができず、
その企業ごとのセンシティブな事情を加味しつつ行います。
給与と言うと人事のこととなるのでCFOの業務外かと思われがちですが、
企業における最大のコストである人件費のコントロール、
その影響を多面的に検討し決定していくという作業はまさに
CFOの腕の見せ所であり、かつ難易度の高い業務となります。
(営業の離職、営業力の上下にも関わり、全部門との調整が必要です。)

※なお、外資系企業におけるFP&A(Financual Planning & Analysis)という部門では、
企業のKPIと報酬体系を連動させ効果的に組織設計することが重要となっています。

総括表

ここまでのスキルセットを簡単に下記の表にまとめてみました。
言及しなかった内容もありますが、下記がCFOとしてのコアスキルとなる場合が多いです。

スキル分類 スキルセット 重要度 獲得方法

メイン1:
経営戦略と事業実行

経営戦略・事業計画立案と実行 必須 事業会社 経営企画
コンサル
MBA
新規事業の立案と実行  
企業価値の算定と分析 必須
業績分析と管理 必須
課題発見(KPIの設定等含む) 重要
人脈保持力、構築力 重要 その他 +α経験による

メイン2:
会計・ファイナンス業務

経理・決算 重要 事業会社 経理
税理士・公認会計士資格
税務 重要
IFRS   IFRS導入企業実務・USCPA
銀行借入 必須 事業会社 財務(経営企画)
MBA
資金繰り 必須
投資判断 重要

メイン3:
コーポレートアクション

IR 必須 基本的には
事業会社の経営企画・財務
(IR担当部署)
IPO 重要
PO  
M&A 必須 事業会社の経営企画・財務
戦略・会計コンサル
PMI 重要
MBO  
マネジメント 給与体系設計(組織マネジメント) 重要 事業会社
(もしくは該当するコンサル)
組織体制構築(組織マネジメント)  
リーダーシップ 必須 実務経験
コミュニケーション力 必須
チームタスク管理  
事業へのコミットメント 必須 その他 +α経験による
自己管理  
英語力 重要
その他(強みとなる+α) 営業部門連携  
PR  
人材戦略  
グローバル化  
情報システム(IT知見)  
マーケティング  
総務業務  
法務  

スキル獲得までのロードマップ

CFOになられている方の経歴は多種多様であるため、
当然、CFOになるために「どうしたらベスト」という正解はありません。

また、一つの企業の中でジョブローテーションしながらCFOになるという道もありますので、
考え方が分かれますが、私の見解としてはCFOを目指すのであれば、
転職を含めたポジションチェンジ、経験・スキル獲得は必須だと思います。

会社が変わるとカルチャーが全く異なりますので、
経験の幅が大きく広がります。
また、CFOのコアスキルというのはどこの会社に行っても普遍的に通用するものが多いため、
「会社を変えても活躍できる力」を意識するうえでも有用です。

転職回数を重ねることが良いことではありませんが、
どこにいってもある程度の年収とポジションがキープできるというのは
精神の安定、心の自由という何物にも代えがたい価値につながりますので、
転職には是非チャレンジしてみてほしいと思います。

スキル獲得に必要な転職と在籍年数

CFOになるためのキャリア設計を15年~20年と置いた場合、
必須スキル獲得までの各職種での経験年数目安は下記のとおり。

【経営戦略と事業実行】
戦略コンサル、経営コンサルで3~5年
【会計・ファイナンス業務】
事業会社における財務・経理で5~7年
【コーポレートアクション】
事業会社における戦略立案や事業開発部署に5年程度
【修練】
上記業務経験後、事業会社における経営企画部長や財務部長等CEO(社長)直下ポジションでの実務経験

キャリア形成モデルケース

実際には新卒後の部門が営業部であったり、
財務経理系、コンサル会社ではない場合も往々にしてあり(それも非常に良い経験です。)ますので、
あくまでモデルケースという意味合いで3パターン示します。

パターン1:事業会社先行パターン
  1. 事業会社で経理(3年)、財務(4年)を経験を経験
  2. 戦略コンサル、経営コンサル(3年)
  3. 事業会社での経営企画(3~5年)
  4. 中堅企業のCFO(もしくはCFO直下ポジション)へのキャリア形成を検討

経理が最初のキャリアスタートというのが最も無難で良いと思われます。
決算業務という会計の基礎的な部分を学んだ後、
コンサルで経営戦略を学びます。
その後、事業会社の経営企画部門でCFOを目指すというパターンです。
私の考えではこれが理想的です。

パターン2:コンサル先行パターン
  1. 戦略コンサル、経営コンサル(5年)
  2. 事業会社での経理部門(3年)
  3. 事業会社での経営企画、財務部門(3~5年)
  4. 中堅企業のCFO(もしくはCFO直下ポジション)へのキャリア形成を検討

コンサルから経理部門に行く場合、年収が落ちるのが難点です。

パターン3:畑違い部門出発パターン
  1. 事業会社で営業(5年)を経験を経験
  2. 事業会社での経営企画(5~7年)→同時並行で簿記により経理スキルを補填
  3. 2と同時に夜間MBA取得(2年)→戦略コンサル、経営コンサル(5年)
  4. 中堅企業のCFO(もしくはCFO直下ポジション)へのキャリア形成を検討

私はこのパターンに近いですが、
30才以降で初コンサルだと転職にハードルがあります。
そのため、場合によってはMBA→コンサルではなく、
「マーケティング」「新規事業」、「予算管理」など経営企画のコアスキルを
学べる会社の経営企画をうまく見つけ、そこで資金調達や銀行取引まで学べると理想的です。

いずれにしても、35才~40才くらいの段階で

・経営戦略立案、事業計画策定
・予算管理(管理会計含めた数値分析)
・経理(仕訳理解、決算作業)
・財務(資金調達、銀行対応、投資判断)
・M&A(その他IPOやPMIがあるとなお可)

このあたりのコアスキルが身についているように
計画的に経験を積むことをオススメします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました