CFOとは ”Chief Financial Officer” の略です。
日本語にすれば「最高財務責任者」といった訳となります。
このCFOという役職(組織における役割・概念)の起源はアメリカとなりますが、日本でいうところの、例えば「財務部長」とは全く異なります。
✓本記事の内容
今回は
「日本企業のあるべき将来像を考察しつつ、CFOはどうあるべきか?」
ということについて書いていきたいと思います。
経営企画部や経理部、財務部に勤める人にとっては、最終的なキャリアの終着点の1つがCFOになると思いますので、今後のキャリアプランの参考にしてもらえれば思います。
✓執筆者プロフィール
・日系の上場企業の経営企画部長
・MBA取得中(国内の経営大学院所属2020年記事執筆時点)
・28才まで営業畑を歩むが、経営企画へキャリアチェンジ。
新卒で住友系の機械メーカーに入社し、トヨタ自動車向けの営業部へ配属。割とすぐ嫌になって1年程で退職。その後コンサルへ。経営企画という仕事に出会ってIPOを主導、31才で上場準備室長として上場達成。以降は経営企画部門一本。
(IPOのBefore・Afterやってるので、IRや法定開示、コーポレート部門の仕事大体全部できます。)
CFOとは何か?
CFOとは日本で生まれた概念ではありません。
では、「元々のCFO」とはどういったものなのでしょうか?
CFOの起源
CFOというのは米国で生まれた概念です。
現在、オフィサー制度(=経営執行制度)を採用している企業ではCEO(Executive)、CFO(Financial)、COO(Operating)の経営3役の経営最高幹部体制が敷かれていることが多いと思いますが、この経営体制は古くからのものではありません。
なぜこういった形になったか結論から言えば、
「所有と経営と執行が明確に分けられるようになったから。」
です。
ここに至るまでには色々な経緯がありますが、
米国では明確に
「会社は株主の所有物」
「取締役は経営を委任され、経営監視をする役割」
「経営を実際に行う(=職務執行)のは執行機関」
という考え方があります。
日本における企業統治(=コーポレートガバナンス)の考え方は米国のそれとは全く異なるため、日本において「CFO」などと言った場合、管理部長とはどう違うのか?管理部門を統括する取締役とはどう異なるのか?という部分がかなり曖昧になっており、これは致し方ないことなのです。
最近では「物言う株主」のように、経営に口を出す株主も出現してきましたが、日本では企業=社長である場合が多く、実際、株主が社長をクビにするということも相当に稀です。企業の社長が「株主に経営を委任され、自分の役割は株主のために企業の価値を最大化する」という意識を持っていることもあまり無いと思います。
この点、オーナー社長の場合はもう株主=経営者であり、会社の利益=自分の利益=株主の利益となるため、精神的な在り方としては全くことなるのは当然です。
CFOの役割と責任
本質的にはCFOとは下記の役割の人のことを言います。
「財務活動や企業における数値管理を通じて企業価値を最大化し、資本効率を向上させることについて企業において最大の責任を負う役割の責任者。」
CFOの起源である米国と日本では考え方の違いはあるにせよ、資本を使って、企業の売上・利益を最大化(≒企業価値の最大化)するという部分については企業活動を行う上で共通のものとなります。
企業活動における役割分担という観点からすれば、
CEOが経営戦略、事業計画を立案、決定し
COOがその計画を実行し
CFOがその計画を数値の面からサポート、チェックする。
ということになります。
中でもCFOの役割は最も守備範囲が広く、全てのことに関与する必要があると言えます。
全ての企業活動には金が必要で、そもそも計画立案の段階で投資、資金調達といったファイナンスの視点、売上予測や原価管理と言った数値管理が出てきますので、CFOは常に全事業に関わりながらCEOとCOOを補佐しつつ、事業判断に主体的に関わっていくことになります。
そのため、本来的なCFOの役割として機能するためには、管理会計やファイナンスのスキルと同等に、事業戦略や事業実行へのノウハウ、コミットが必須です。
この部分が多くの日本企業における弱点であり、資本効率が悪いとされる日本企業の経営上の問題と私は考えています。
日本企業におけるCFO像
実は、経営企画部というのは日本に独特な企業の機能です。
外資系の企業に「経営企画部」という部署は存在せず、該当するのはFP&A(Financial Planning&Analysis)という部門(職業分野)で、経理部門が管轄しています。
日本における経営企画部門の実態
日本における経営企画部門の業務管轄は大抵の場合
「事業戦略の策定、経営計画の策定」 となっています。
ですが、経営企画部が本当にその機能を果たしている企業は少ないと思います。
実際の事業戦略やM&Aのような大きな事業判断は結局、社長以下取締役の口頭のやりとりや経験9割方で決定され、経営企画の実際の業務というのは、どこにも行き場のない「迷える業務たち」が集まる場所になりがちです。実際の日々の業務はほとんど雑務のようなものであったり、まだ広報部や人事部が独立するほどでもない規模の企業の場合は事業計画策定などよりIRや採用、総務部的な仕事が多かったりします。
(私はこれを皮肉って経営企画部長をCZO(チーフ・雑用・オフィサー)などと言ったりすることがあります。)
こうした実情を踏まえると、
CFOの業務管轄を日本企業におけるいい方に則して言えば、
CFOの業務管轄=経営企画のコア業務+経理・財務業務
であると言えると思います。
未来の日本企業のCFOのカタチと重要性
日本企業の組織構造においては業務が縦割りになりすぎており、全部門を横断的に管轄し、数字に精通しつつ、かつ事業判断にあたって的確な言及が行える人材がいないという問題点があります。というより、そういうものが求められていないのかもしれません。(社長からするとやりにくくなりますし、そういった業務体制になっていない。)
積極的にそういった立ち位置を確立しようとする人材が該当部門に居る場合は異なりますが、組織力が属人的なレベルに左右されるというのは問題だと思います。
しかし、企業全体の数値管理を行いながら経営戦略に関わり、事業の計画の立案、およびそのPDCAに口を出し、事業にコミットしながら予算と実績の差を埋めていく、という強いCFOがいないことが日本企業の弱点の一つであると私は考えています。
未来の日本企業におけるCFOの重要性
話が少し逸れますが、日本はやはり今でも経済大国です。
自国の経済が大きいため、日本である程度スケールできれば、それなりの企業体になることができるので、創業時の段階からグローバル展開を考える創業者は多くありません。
一方で、例えば北欧の企業の場合などは、そもそも自国の経済圏だけではかなり発展が限られるため、創業当時から多国籍に展開し、世界戦略を視野に入れており(当然、日本に比べて言語の壁が無いほか、地理的な要因という理由もあると思います。)、経営戦略やビジネスモデル、事業の効率化への執念が日本とは比べ物になりません。
例えばですが、IKEAのようなチープ路線の家具を扱う企業が世界制覇し、レゴのような単純な「ブロック」という玩具が大量の特許を取得しており、大きな参入障壁を構築し、確固たるポジションを確立しています。
マーケティングや経営管理、経営戦略立案などの機能を本国ヘッドオフィスで行い、その他の機能を効率的に配置し、ビジネスモデルもしくは商品力で勝っていく、という戦法は、資源が少なく少子高齢化が進む日本企業が目指すべき一つのロールモデルだと私は考えています。
こうした企業活動を行う上で、経理・財務を管轄し企業全体数値を把握しつつ経営戦略の立案、実行に関わることができるCFOの存在は日本企業にとって非常に重要なポジションをとっていくはずです。
CFOに必要なスキルセット
これからの日本企業において真に価値あるCFOとなるためには、意図的にスキルアップしていく(=業務経験を積む)ことが重要です。
なぜなら、よほど恵まれた業務環境と運に恵まれなければ、広範に必要なスキルを経験し、獲得することができないため、ある程度自分が経験する仕事を早い段階からコントロールする必要があるからです。
キャリアップ戦略や各スキルを身に着けるための詳細についてはまた別の記事で書きたいと思いますが、下記に「一流のCFOを目指すために重要」というスキルセットをまとめておきます。
赤:必須
青:重要
経営戦略と事業実行
- 経営計画・経営計画立案と実行
- 新規事業の立案と実行
- 企業価値の算定と分析
- 業績分析と管理
- 課題発見(KPIの設定等含む)
- 人脈保持力、構築力
会計・ファイナンス業務
- 経理・決算
- 税務
- IFRS
- 銀行借入
- 資金繰り
- 投資判断
コーポレートアクション
- IR(適時開示、決算開示含、投資家対応)
- IPO
- PO
- M&A+PMI
- MBO
マネジメント
- 給与体系設計
- 組織体制構築
- リーダーシップ
- コミュニケーション力
- チームタスク管理
- 事業へのコミットメント
- 自己管理と道徳心
- 英語力
その他(強みとなる+α)
- 営業部門連携
- PR
- 人材戦略
- グローバル化・グローバル経営
- 情報システム(IT知見)
- マーケティング
- 総務業務
- 法務
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